日本と台湾の懸け橋になる会世話人 喜早天海




日本語族と呼ばれる人たちの中には単に日本語が話せるだけでなく、俳句・短歌を詠んだり自分で
本を出版したりしている人もいます。その中の一人である劉心心さんから先月真新しい本二冊送ら
れてきました。文集1『海の向こう』と文集2『折々の記』と題名が書かれた600頁に及ぶ心心さん
の力作でした。心心さんからは、以前も何篇か原稿を戴いたことがあり、中でも一番衝撃的だった
のは「故郷」という詩で、今回の文集1の冒頭に載っていました。

 詩「故 郷」

半世紀以前のある日、学校の先生は生徒に言いました。
「今日からお前たちはみんな日本人だ。北の方、東海の向う。
 天皇陛下のおわす内地が、お前たちが忠誠を尽くすべき
 国家。」

40年前のある日、学校の先生が学生に言いました。
「今日からお前たちはみんな中国人だ。西の方、台湾海峡の
  向う。中国大陸がお前たちの愛する祖国。」

20年前の学生は友達に言いました。
「東の方、太平洋の向うに広大な土地がある。みんな一緒に
  移住しよう。みんなでアメリカ人になるんだ。我々のドリームは
  アメリカにある。」

今の大人たちは自分のアメリカの子供に言いました。
「太平洋の向うの小さな小さな海島、緑濃き山々、清らかな
  流れ、純朴な人々。あそこがお前たちの故郷。我々の真の
  国土なのだ。」

暖かい母親の懐(ふところ)よ。赤子の揺りかごよ、
懐はいずこに。揺りかごは?
寂しい台湾人よ、流浪の台湾人よ。
どうして、お前の故郷はいつも海の向うでなければ
ならないのだろう。

この詩には台湾の歴史と台湾人の悲哀と故郷台湾を思う切実な思いが込められています。この詩の
あとに白色テロと呼ばれている蒋介石国民党軍隊による台湾人大量虐殺事件のことが記されています。
心心さんのお父様も白色テロの犠牲者であり、多くの日本人にはほとんど知られていない白色テロの
内容を読んだら、きっと知られざる台湾の暗黒の歴史の一端に驚愕することでしょう。1949年5月から4
0年近く戒厳令を敷かれたことによりこの間の真実が闇に葬られ誰も口にすることもなく、世界中の人
たちばかりでなく、現在台湾に住んでいる若い人たちにも半世紀近く知らされることがなかったのです。
心心さんはきっと書きながら誰かが勇気を持ってこの隠ぺいされた真実を後世の人に伝えなければと思
ったことでしょう。最初の章である「台湾受難編」は多くの人に是非読んでもらいたい個所です。
そのほか、台湾の風俗習慣、旅行記、エッセイ、詩などが収録されています。昭和3年(1928年)生ま
れの心心さんは終戦の前年に台中第二高女を卒業し、小さい時から書くのが大好きだったとのこと。
第二高女の同窓会誌(紙)にも毎回必ず投稿しておりました。
「私は台湾語で書きたくても文字がない。中国語で書くのは自信がない、自分の素直な気持ちが表現で
きるのは日本語だけ。でも子供や孫たちは日本語が分からない。私が日本語で書いても読んでくれる家
族がいない。」
でも心心さん、息子の治平さんは2集の前文のこう記したんじゃありませんか。
「母の一心に書いている心境、母の過ごしてきた世界を子に孫に残したいと、一字一字と書き連ねてい
る気持ちが伝わってくるのです。不可解な日本語の文章は、私たちにより多くの想像と懐古の情をもた
らすばかりでなく、私たちの家族の成長過程であり、永久に私たちの心の中にしまっておくべき宝の蔵
なのです。」と
そうなんです。この本の素敵な表紙や挿絵は娘さんが描き、心心さんの家族にとっては宝物になったの
です。ぼくにもその宝物を分けていただき、有難うございました。

台湾で日本語族と呼ばれている人たちはあと10年もたてばほとんど書ける人はいなくなってしまうこと
でしょう。それ故に心心さんのような日本語族の人たちが書かれたものは、自分にとって宝物であり、
本棚の中で最も貴重なものが占める位置に並べていくつもりです。
心心さんは、本を500冊しか印刷しておらず、日本で印刷したこともあり一冊当たりのコストが高くつ
いたそうです。本の定価は二冊セットで3000円ですが、著者本人としては本の売り上げ代金はすべて
東日本大震災の義援金にするとのことです。どうかお含みおきください。
本のお求め先:
 台湾在住者の方は、送料込みでNT1000元とのことです。購入ご希望の場合は
    著者あてに直接メールか電話で申し込んでください。
  劉心心さん メール <yehliu224@hotmail.com>,電話02-2341-7668
 日本在住者の方で、購入ご希望の場合は下記あてに申し込んで下さい。
  明巧堂印刷(株)宮崎県延岡市古川町82-10 電話0982-33-6327
   メールアドレス 田口浩貴(こうき)社長 ktaguchi@mac.com

読者の皆さんにも是非読んでもらいたく本日は良書紹介させていただきました。

創作者介紹

台灣之聲

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