close

一つの運動の「悲願」が達成された。これまで政府(法務省入国管理局)によって在日台湾人に押し付けられてきた「中国」国籍保持者との誤った法的身分が、ついに改められることになったのだ。

これまで在日台湾人に交付されてきた外国人登録証の国籍記載は、在日中国人と同様に「中国」だったのだが、七月八日に改正「出入国管理及び難民認定法」(入管難民法)が参議院で可決、成立したことで外登証が廃止され、在留カードが交付されることとなり、これを機に台湾人の国籍が「台湾」へと改正されることとなったのだ。

入国管理局から聞かされた説明によると、!)「時代が変わった」ことと、!)「国籍表記を変えてほしいとの声が高まった」ことが「台湾」への改正の理由だそうだ。

「時代が変わった」と言うのは、台湾が蒋介石独裁時代のように自らを「中国の正統政権」などと主張しなくなったことを指すのだろうが、いったい今ごろ何を言っているのかと言いたくなる。

「変えてほしいとの声が高まった」と言うのは、要求運動が起こったからだ。この運動がなければ、今回のような措置がとられたとは思えない。なぜなら入国管理局には、台湾人の国籍改正問題などに驚くほど関心がなかったからだ。

要求運動は平成十三年五月に林建良会長(当時)ら在日台湾同郷会によって開始された。「台湾」への改正を求めるものだから「台湾正名運動」と名づけられた。これには我々台湾研究フォーラムなど、多くの日本人も加わった。

先に「運動の悲願」と書いたが、在日台湾人にとってのそれは「台湾人の尊厳と人権を守ること」、そして日本人にとっては「政府の中国への配慮による台湾人侮辱の停止」。台湾が中国の一部でない以上、「中国」国籍の強要は明らかる行政のミスだ。だから多くの人は当初、政府はそれを改正せざるを得ないと見ていたのだが、政府の「中国への配慮」「台湾人の人権無視」の姿勢は「本物」だった。

法務省は「台湾は日本が国家承認するところの広い意味の『中国』の一部」との理由をでっち上げ(国家承認する「広義の中国」など存在しない!)、自らの措置を正当化し、抗議の声をあえて黙殺したのだった。

かくしてこの問題、この運動は、マスコミからもほとんど関心を持たれることもなく、そのため国民に広く知られるにも至らなかった。

衆議院では西村眞悟議員だけがこの問題を取り上げたが、時の森山真弓法務大臣は「(国籍表記は)以前からそうなっている」と事務的に答弁するのみで、まったく問題視しなかった。

これを重大視していたのは中国のシンクタンク、社会科学院くらいか。この運動を陳水扁政権の発足に呼応する台湾独立派と「日本右翼」の結託だと大袈裟に報告していた。

しかしその一方で運動は、予想外の発展も見せている。日本政府への抗議運動は台湾へも飛び火し、やがてそこでの台湾正名運動は李登輝氏をリーダーとし、「中華民国」の名を「台湾国」に改める大国民運動へと拡大。その年の九月には台北市内で十五万人もの大デモ行進が行われた。またこの運動体は平成十六年二月、二百二十万人参加の人間の鎖運動も行っている。

一方日本でも、在日台湾人と日本人共闘の台湾建国支持の運動が勃興することになった。メールマガジン「台湾の声」が創刊され、それが運動情報センターとなった。また在日台湾同郷会や台湾研究フォーラムなど運動で合流して心の絆を深めた両国民は、全国組織である日本李登輝友の会を結成した。

その後、外登証から在留カードへの意向を察知した都内の有志が平成十九年、国籍改正要求の署名活動を開始、翌年には日本李登輝友の会も同様の運動を始め、全国にそれを広げた。国会議員らの支援も高まった。

そしてそうしたなか、今回の法改正となった。

改正入管難民法の第十九条の四は、「国籍の属する国又は第二条第五号ロに規定する地域」が在留カードを記載事項とすると定めるが、「国」ではない台湾が該当するのは「第二条第五号ロに規定する地域」である。それは「政令で定める地域」と言うもので、「台湾ならびヨルダン川西岸、ガザ地区」を指している。したがって台湾人の国籍は今後「台湾」となるのである。

もちろん「台湾」は国籍ではなく、国籍の属する「地域」名との位置づけになる。だがこれにより、台湾人が日本社会において、これからは「中国国籍保持者」と看做されることはなくなるのである。

政府の長年にわたる、しかもこれほど強烈だった媚中行政が改められる意義は大きい。しかし残念ながら、これを報じるマスコミはいまのところない。中国人の人権問題なら大騒ぎしそうだが、台湾人の問題になると、ここまで冷淡であるわけだ。政府の「台湾人イジメ」が放置されるわけである。

ただし台湾各紙は報道した。自由時報(七月九日)は「在日台湾人が中国国籍として登録されるようなことはこれからはなくなる」と伝えているが、この一文を読むだけで、台湾人がこれまで日本政府によって与えられてきた屈辱の大きさが伝わってくるようだ。

中国時報(十日)は「この法案の通過は、在日台湾人や親台派日本人を興奮させた」と報じている。

台湾建国を主張する台湾のブログ「我是一個外省●仔,我主張台灣獨立」の管理人は日本留学当時、やはり「中国」国籍で屈辱を味わった一人(●=国の玉が子)。今回の法改正を大きく取り上げ、「日本在住の台湾人や台湾を支持してくれるすべての日本人のご苦労に感謝したい。私たちも台湾で努力を続ける」と書くが、まさにその通りだと思う。さらなる「努力」が求められるのはこれからなのだ。

【参考】ブログ「我是一個外省●仔,我主張台灣獨立」 
賀!台灣國籍正名活動初歩成功
http://tw.myblog.yahoo.com/love-narumi/article?mid=3820&prev=3823&next=3746

日本国内でも、たとえば日本人にもさらに悪影響が大きい「台湾入り中国地図」蔓延の問題がなお立ちはだかっている。「台湾は台湾人の国」「台湾は中国の一部ではない」「中国は台湾侵略をやめろ」と国民全体が訴えることのできる日を目指し、運動を今まで以上に拡大しなければならない。

近く日本李登輝友の会などは祝賀会を挙行する計画だが、それは新たなる戦いに向けての決起集会ともなると思われるので、そのときは大勢の人に参加してもらいたい。

この運動に携わってきた皆様、お疲れ様でした。署名に応じてくださった方にもお礼申し上げます。今後もこの勢いで参りましょう。

*************************************************************************

台湾研究フォーラム(台湾研究論壇)第124回定例講演会

「JAPANデビュー」が黙殺した台湾統治時代における日本人の心を紹介!
奮って参加を!

■ 講 師 平野久美子氏 (作家・ノンフィクションライター)
■ 演 題 日本と台湾、水の絆 

日本と台湾の両国の先人が一世紀以上も昔から営々と築いていた水の絆――それは美しい自然と豊かな水資源に恵まれた国に生まれ育った者たちが、生まれ育ったふるさとの大自然の恵みを末永く大切にしていきたいと願う、心の交流そのものではないでしょうか。

今回の定例会は、屏東県に「地下ダム」を造った鳥居信平について、『水の奇跡を呼んだ男』(産経新聞出版)を刊行された平野久美子さんをお招きし、お話しいただきます。

また、7月12日に鳥居信平生誕の地である静岡県袋井市で行われる胸像除幕式の報告や、屏東県を舞台とした日台の恋物語を描いた映画「海角七号」についてもお話しいただく予定です。
---------------------------------------------------------------------------------------
(ひらの・くみこ)作家。東京都出身、学習院大学卒業。出版社勤務を経てフリーに。多角的にアジアをとらえた作品が多い。『淡々有情-日本人より日本人の物語』(小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞を受賞。『テレサ・テンが見た夢-華人歌星伝説』(晶文社)、『トオサンの桜-散りゆく台湾の中の日本』(小学館)ほかの著書がある。
---------------------------------------------------------------------------------------
【日 時】 7月18日(土)午後6時~8時
【場 所】 文京区民センター 3―A会議室
      JR「水道橋駅」徒歩10分  
      都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分
      東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩3分
【参加費】 会員 500円 一般 1,000円
【懇親会】 閉会後、会場付近にて。(会費 3,500円、学生 1,000円)
【問合せ】  090-4138-6397
■会員募集中 年会費2,000円(定例会会場でも受け付けます)

arrow
arrow
    全站熱搜

    taiwanyes 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()