パイワン族の当時の証言見つかる/やはり英国では「厚遇」を受けていた

                 永山英樹

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NHKは「JAPANデビュー」の第一回放送「アジアの“一等国”」で、中国
の反日歴史観そのままに、日本の台湾統治史を台湾人弾圧史として描くため、数
々の歴史捏造、印象操作を行い視聴者を欺いた。そこで日本の裁判史上最大の一
万人余の原告団に提訴されているが、その歴史捏造の中で最も衝撃的だったのが
「人間動物園」の作り話だろう。

それは一九一〇年(明治四十三年)にロンドンで開催された日英博覧会で、日本
人が台湾の原住民で、クスクス社と言う部落のパイワン族の青年たちを見世物に
する「人間動物園」を開いたと言うショッキングな話だったが、その後の数々の
調査で、日本人がパイワン族を「動物」扱いにした事実はなく、むしろ博覧会で
「暮らし」を再現して見せたパイワン族たちは現地で大切にされ、それを誇りに
帰国したことなどが明らかになっている。

だから先人が虐げられたと言われたパイワン族の間からは、NHKには民族の誇
りを傷つけられたとの怒りの声が起こり、三十数人もが原告団に加わっている。

パイワン族がこのNHKによる名誉毀損を知ったのは、チャンネル桜の取材を受
けてだった。同族の名士である華阿財氏は、英国帰りの先人たちが現地での楽し
い思い出を語っていたと証言する中で、後年かの国の人がクスクス社を訪れ、二
十六日間滞在した時には歓待したと語っていた。

そう語る華阿財氏をチャンネル桜の番組で見た記憶のある人は多いことだろう。
パイワン族は誇り高い民族だ。もしNHKが描く如く、英国で虐待を受けていた
なら、英国人を歓迎することなどなかったはずである。

英国人を歓待したとの事実は、昭和五年に刊行された藤崎誠之助著『台湾の蕃族
』(国書刊行会)にも記載されていることが最近わかった。

そこにはおおよそ次のようなことが書かれている。華阿財氏の話とほぼ符合して
いる。

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英国人のウイリアムとブライスが動植物の採集のため、明治四十五年(大正元年
)五月十日から六月四日にまでの二十六日間、阿緱庁・台東庁・花蓮港庁
の蕃地(原住民居住地域)に入ることを願い出でたため、総督府はこれを許可し
、殖産局雇いの菊池米太郎を同行させ、蕃務本署長は三庁長に対し、蕃地滞在中
の一行に対し、便宜を図るよう通知した。その時、日英博覧会に参加した阿緱
庁下のパイワン族の蕃人(原住民)がこのことを知り、高士仏社(クスクス社。
現高士村)蕃務官吏駐在所を訪れ、「私たちは滞英中、あの国民から厚遇を受け
たことを今でも忘れていない。聞くところによれば、まもなくあの国の人が私た
ちの蕃地に入ると言うことだが、できれば席を設けて遠来の労を慰め、ここに滞
在中は一切の世話をさせてほしい」と申し出た。蚊蟀支庁管内の蕃地に到着した
ウイリアムは、このことを駐在所員から聞いて承諾し、六月一日に高士仏へと赴
いた。渡英した蕃人の男女は社外で出迎え、駐在所の事務所で宴会を開き、テイ
ポとサロンガイが歓迎の辞を述べたが、宴たけなわとなるや、蕃人たちは記憶し
ている英語で応じ、楽しい夜を過ごしたのだった。
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ちなみに原文は下の通りだ(ここでは仮名遣い、漢字を戦後の表記に変える)。

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英国人ウイリアム、ブライス動植物採集の為め、明治四十五年(大正元年)五月
十日より六月四日に至る迄二十六日間、阿緱・台東・花蓮港三庁の蕃地に
入らんことを願い出でたので総督府は之を許し、殖産局雇菊池米太郎をして同行
せしめ、蕃務本署長は三庁長に対し、同人の入蕃中相当便宜を与うべき旨を通牒
した。其際日英博覧会に出場したる、阿緱庁下のパイワン族蕃人之を聞知
し、高士仏社蕃務官吏駐在所に来り請うて曰く「我等滞英中彼の国民より、厚遇
せられたことは今尚銘肝する所、聞くが如くんば該国人、不日我蕃地に入ると、
冀くは筵を設けて聊か遠来の労を慰め、且同人の此の地に留る間は、我等をして
一切の事を弁ぜしめられんことを」と、由てウイリアムの蚊蟀支庁管内蕃地に至
るや、駐在所員伝うるに此意を以てせしに、ウイリアム之を諾し六月一日高士仏
に赴く、渡英蕃人の男女出でヽ之を社外に迎え、宴を駐在所の事務所に開きテイ
ポ、サロンガイ起て歓迎辞を演べたるが、宴闌なるに及び蕃人等は約略記憶せる
英語を以て、応酬対話し一夕の歓を罄した。

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渡英した本人が「我等滞英中彼の国民より、厚遇せられたことは今尚銘肝する所
」と述べているのである。しかしNHKは、彼らが「動物」扱いを受けたと断じ
、幾万もの視聴者に誤った印象を与えたのである。

このようにパイワン族がロンドンで侮辱され、虐げられた事実はなかったことを
示す戦前の資料は、すでにこのほかにも日本李登輝友の会が収集をしているとこ
ろだ。

それでも「パイワン族の人たち自身が当時どう受け止め、感じたかということは
、『人間動物園』の事実を左右するものではありません」(「シリーズ・JAPANデ
ビュー 第1回『アジアの“一等国”』に関しての説明・追加」)と言ってのける
NHK。「こうしたことは台湾の方々にとっても心地よいことでないことはもち
ろんですが、番組は当時の状況の中でおきた事実としてあくまでも客観的に伝え
たものです」と、あくまでも非を認めない構え。その傲慢さがまたパイワン族の
怒りを高めている。

しかしそれでありながら「人間動物園」が行われたとの証拠は、いまだに一つも
示せないでいるのである。

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