歪曲された「日台戦争」史観に「誠」はない
――NHKスペシャル「台湾弾圧」史観の問題点(その3) 

ブログ「台湾は日本の生命線!」より
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■台湾平定戦は日台相互の誤解が生んだ悲劇

昨年、台湾で話題となった映画に「一八九五」(洪智育監督)がある。一八九五年、日清戦争の結果割譲された台湾の接収に向かった日本軍に対する、住民の抵抗の戦いを描いたものだ。

当時台湾の住民は武力で遥かに勝る日本軍に果敢に挑み、大勢が殺されている。この映画が公開される前、国民党が推奨しているとのニュースもあった。同党は当時の抗日を中華民族の抗日として称える反日宣伝もして来たから、私はそれも当然だろうと思った。そして日本軍の残虐性だけが強調され、当時の歴史状況が見えにくくなるのではないかと懸念した。

あのときの日本軍は、予測される住民の抵抗を粉砕する体勢は採っていたものの、実際には略奪、殺戮ではなく、あくまでも台湾の接収と統治を目的としていた。ところが多くの台湾の良民はそうは思わなかった。「人の血をすする」とまで言われ、野蛮で残虐と噂される日本人なるものから、家族と土地を守るため、多くが義勇軍に加わって立ち上がったのだった。日本軍はそうした一般庶民をゲリラと看做さざるを得ず、掃討した。

私はこのような双方の誤解が生んだ悲劇こそ、当時の歴史の大きな一側面だと考えている。だからこの作品に不安を覚えながら鑑賞したところ、それが私とほぼ同じ視点で、歴史の「悲劇」を描いていることがわかった。

■台湾人の真実史観より中国人の政治史観に近いNHK

「あらすじ」はこうだ。

ところは台湾の苗栗にある客家人地域。住民たちは土匪の略奪と戦いながら生きていた。そこへ「東洋番」(日本人)も土地を奪いに繰るとの噂が流れた。清国の権力者たちはすでに本国へと逃亡しているが、逃げる場所もない住民たちは抗日を決意する。一方、そのころ島に上陸したのが近衛師団長である北白川宮能久親王と軍医の森鴎外。ともに実在の人物だ。島の美しさに魅せられた彼らは、抵抗を受けることなく、順調に台湾統治が始められることを望んでいる。ところが苗栗の住民から攻撃を受ける。北白川宮は捕虜にした住民のリーダーの一人である青年に「我々は戦いに来たのではない」と告げるのだが、抵抗の決意の堅い青年は聞く耳を持たず、獄中で自尽して見せる。やがて北白川宮に、日本軍が大きな損害を受けたとの情報が入る。抗日には老人、女性までが含まれていると言う。そこで北白川宮は「これは接収ではない。戦争だ」と断じ、無差別掃討の命令を下す。かくして苗栗の義勇軍も勇戦むなしく壊滅する。北白川宮は「早くこの戦争を終わらせ、本島の平和回復を決意している」と語る。森鴎外は「何のための戦争なのか」と嘆く。

このような内容の作品であるが、残虐な殺戮のシーンは敢えて出さない。ただ最後に出る「全島で一万二千人が死亡」とのテロップで、台湾人の運命がいかに残酷なものであったかを伝えるのだ。

もしこの映画が日本で公開されることがあれば、ぜひ大勢の人に見て欲しいと思った。この作品が教えてくれるのは歴史事実だけではない。そこでは歴史を客観的に捉えつつも、郷土を守るために戦い散った先人たちに敬意を捧げようと言う台湾人の美しい「誠」の心を感じ取ることができる。

国民党の中国人から見れば、この作品は反日と言う政治意識の希薄な「親日」映画として批判の対象となるのだろう。もちろん中共から見てもそうだろう(中国で上映が許可されるとは思えない)。そしてもう一つ、同じ評価を下すと考えるのが、日本のNHKだ。

四月五日に放映の「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー」の第一回「アジアの“一等国”」を見るかぎり、そう疑わざるを得なくなる。

■治安確立の平定戦も対外侵略戦争として扱う

日本による苛酷な台湾統治の歴史を暴くことを主眼とするこの番組は、こう語る。

―――日本は統治に力を注ぐ。しかし領有直後から問題が噴出する。漢民族としての伝統や誇りを持つ台湾人が、日本の支配に対して激しい抵抗運動を起こしたのだ。

―――武力で制圧しようとする日本軍に対し、台湾人の抵抗は激しさを増して行く。戦いは全土に拡がり、後に「日台戦争」と呼ばれる規模に拡大して行った。

「親類達から、住民が武器を取って日本軍と戦った様子を伝え聞いている」と言う老人も証言を行う。

「日本軍は川の下流から来た。台湾人は川の両岸で待ち構えていた。山の中にも潜んでいた。日本軍を取り囲んで射撃したのだ。しかし日本軍の攻撃はすさまじく恐ろしかったと聞いている。このあたりの川は、死者の血で真っ赤に染まったと言う」

このように番組は、漢民族である台湾人がいかに日本の支配を嫌い、抵抗し、その結果殺されたかを強調し、台湾統治の残酷さを視聴者に訴えているのだが、ここで当時の歴史を俯瞰しよう。

北白川宮師団長率いる近衛師団が台湾北部に上陸したのは一八九五年五月二十九日。それに先立つ同月二十三日、台北では日清戦争中に結成された台湾人の義勇軍勢力の圧力で、清国統治機関が台湾民主国の独立を宣言していた。しかしその正規軍である清国兵に戦意はなく、六月八日には早くも台北城を占領し、十七日に始政式を挙行。清国兵には反抗も不問に付し、本国へ送還した。

日本側は住民の弾圧などを予定していなかった。そのため敷かれたのは民政だった。ところが間もなくそれは軍政に切り替えられる。住民の激しい抵抗が見られたからだ。

まず中部へと接収に向かった部隊が各地で義勇軍の攻撃を受けた。まさに「一八九五」が描いたそれである。住民皆兵とも思えるゲリラ攻撃に、日本軍は焦土作戦を余儀なくされるが、殺戮はさらなる抗戦を呼ぶとの悪循環だ。そしてついには陸軍の三分の一に当たる五万の兵力などで、再建された台湾民主国の拠点である南部の台南を攻略し、十一月十八日に全島平定を宣言した。

この間見られた台湾人の遺棄死体は約二万。日本軍の損害は百六十四人。マラリアなどによる戦病死者は四千六百四十二人だった。

「戦争だ」と言う「一八九五」のセリフを真似たわけではないだろうが、番組はこの悲劇の台湾平定の戦いを「日台戦争」などと呼称している。日本軍の対外「侵略戦争」をもう一つ付け加えたつもりだろうか。

しかし当時すでに台湾は日本の領土なのだ。軍隊は「反乱」を平定するしか、治安を確立する方法はなかったのである。

■NHKが語らない後藤新平の土匪対策の真相

ところがその後も熾烈な反抗は続く。その中心は土匪集団である。台湾は清国と土匪が二重支配する島で、水滸伝の世界のように各地で割拠する匪賊が、日本人を縄張りを新来勢力と看做し、それへの襲撃を繰り返したのだった。

各地において討伐を加えれば加えるほど抵抗を強める土匪集団のために台湾統治は捗らず、そのため中央政界で「台湾をフランスに一億円で売却しろ」との声が上がったのはよく知られている。

こうした状況を打破したのが一八九八年三月に台湾総督府民政局長(のちに民政長官)に就任した後藤新平だ。インフラ整備、産業振興などで台湾の近代化をレールを敷いたことで知られる後藤新平が先ず着手したのが治安の確立、つまり土匪対策である。そしてその基本は討伐ではなく「招降」、つまり帰順を説得することだった。

各地の土匪の頭目に使者を派遣し、帰順をすれば前非は問わず、投降準備金を与え、さらに土木工事などの仕事を与えるとの条件を示したため、北部の土匪集団は次々と降伏した。そして彼らによって道路、鉄道などのインフラが整備されて行ったのだ。

ところが中・南部の土匪はなかなか招降に応じず、相変わらず武力抗争を挑んでくる。その結果、各地で戦闘が発生、日本軍は数千人の土匪を殺しているが、なかなか帰順しない。そしてどんなに追い詰められても、逆に招降に応じる条件を提示してくる始末。それは支配地域での武器携帯による治安維持の許可、徴税の許可等々だった。これに対して日本側は徴税権の付与はさすがに拒否したものの、その他の要求は呑むと言う譲歩も示している。

かくして一九〇二年八月、全島における土匪討伐は終了を宣言され、島内に平和と安定が確立し、近代社会への変革が本格化して行ったのだった。

しかし番組はこうした後藤新平の涙ぐましい施策を論じない。そしてその代わりに次のようなエピソードを強調する。

■NHKは「一般住民まで殺した」と言いたいのか

―――(後藤が)先ず手を着けたのは、住民の抵抗運動を抑えることだった。後藤が考え出した条令、匪徒刑罰令だ。日本内地ではあり得ない厳しいものだった。略奪、殺傷のみならず、建物や標識、田畑を破壊した者は死刑。未遂であっても同罪とする。総督府警察が、匪徒、犯罪者と看做せば、たとえ未遂でも死刑に処せられた。

―――匪徒刑罰令によって死刑になった台湾の人々。条令施行後の五年間で、三千人に達した。

これではまるで、土匪ではない一般の「台湾の人々」まで死刑になったかのようなアナウンスである。

ところが一八九八年十一月五日に発布、施行されたこの匪徒刑罰令の第一条には「何等の目的を問わず、暴行又は脅迫を以て其の目的を達する為め、多衆結合するを匪徒の罪と為し、左の区別に従って処断す」とある。つまりその対象はあくまでも「多衆結合」する土匪集団なのだ。

■反日番組制作のためには手法を選ばないNHK

では、土匪をどのような場合に、どのように「処断す」るのかと言うと、

「首魁及び教唆者は死刑に処す」
「謀議に参与し、又は指揮を為したる者は死刑に処す」
「附和随従し、又は雑役に服したる者は有期徒刑、又は重懲役に処す」。

つまり謀反を起こしたリーダー格は死刑にすると言うわけだ。

しかし第二条には「附和随従し、又は雑役に服したる者」、つまり下っ端についても、次のような行動に出たときは「死刑に処す」とある。すなわち、

「官吏、又は軍隊に抗敵したるとき」
「火を放ち建造物、汽車、船舶、橋梁を焼燬し、若しくは毀壊したるとき」
「火を放ち山林、田野の竹木、穀麦、又は露積したる柴草、其他の物件を焼燬したるとき」
「鉄道、又は其の標識、灯台、又は浮標を毀壊し、汽車、船舶往来の危険を生じせしめたるとき」
「郵便、電信、及び電話の用に供する物件を毀壊し、又は其の他の方法を以て其の交通の妨害を生じせしめたるとき」
「人を殺傷し、又は婦女を強姦したるとき」
「人を略取し、又は財物を掠奪したるとき」

そして第三条には、こうした所為は「未遂犯罪の時に於いて、仍お本刑を科す」とも規定する。

だから番組は「日本内地ではあり得ない厳しいものだった」「略奪、殺傷のみならず、建物や標識、田畑を破壊した者は死刑。未遂であっても同罪とする」と強調したわけだが、それは安定した近代的法治社会での感覚で歴史を裁くとの誤った手法である。

土匪の討伐は法治社会を確立されるためのものだった。つまり当時台湾は法治社会ではなかったと言うことだ。

「日本内地ではあり得ない」のも当然なのだ。内地には政府を政府と思わず、警察権力をも恐れない危険極まりない無法武装集団の跋扈はなかったからである。

これらのような土匪の行為が未遂であれ何であれ、土匪の行為である以上は討伐するしか方法はないと、日本人は判断した。それは極めて合理的な判断だろう。そこまで厳しく望まないかぎり、命懸けで向かってくる土匪の襲撃など防ぎようがないからだ。いや実際にはこの条令を以ってしても、土匪の日本人殺害は跡を絶たなかったわけである。

■「誠」を持たない有害・無法のテレビ局

忘れてはならないのは、当時の土匪政策の原則はあくまでも、前非を問わずに仕事を与え、法治社会の一構成員とするとの「招降」だったことなのだ。事実、この条令の第六条にも「本令の罪を犯したる者、官に自首したるときは情状に依り其の刑を軽減し、又は全免す」とはっきり規定されているのではないか。あまりにも寛大な政策である。

しかし番組は、こうした事実には一切触れていないのである。

条令施行後の五年間で死刑になったのは「三千人に達した」と言うが、その多くは上でも書いたように、招降に応じず日本人への襲撃を続けた者たちと見るべきだ。土匪に加担さえしなければ、「総督府警察から匪徒と看做される」ことはなかったはずである。

NHKは台湾人弾圧こそが台湾統治の本質だったと主張することに急なあまり、このような番組しか作れないのである。いや、このような番組を作りたいがため、敢えてそうした歴史の書き換えを行ったと言うべきだろう。

しかも国民の受信料を使ってだ。

反日番組制作のためなら手法も選ばぬNHKの無法ぶりを見ると、まさに「土匪」そのもの。あまりにも有害である。真実を追究し国民に伝えようとの「誠」の心がないのだ。

[主な参考文献] 喜安幸夫『台湾島抗日秘史』(原書房、昭和54年)

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