三宅 教雄(元海上保安官)

◆海上における犯人の捜査及び逮捕

 去る8月15日、中国(香港)「保釣行動委員会」のメンバー等14人を乗せた抗議船「啓豊二
号」が、海上保安庁巡視船の退去命令を受けながらも魚釣島への不法上陸を果たした。そ
の後の事は新聞・テレビが報じた通りである。

 巡視船が10隻もいながらどうして不法上陸する前に、海上で検挙することができなかっ
たのか? と疑問を呈する向きが多い。私も当初はそう思った一人である。

 それどころか、公務執行妨害罪、威力業務妨害罪、器物損壊罪などのいずれも問わず、
翌16日には入管難民法第65条だかを適用して強制送還した。

 しかも、新聞・テレビを観ていると、コメンテーターらしき人物がもっともらしい顔を
して「今回の事件は、政府の描いたシナリオ通りであった」と言わんばかりの報道をして
いる。

 その上で、不法上陸した中国人は、海上保安官に逮捕権がないから、警察官が逮捕した
とうそぶいたのには驚いた。いったい、どこの誰が、いつから、何を根拠に「逮捕権がな
い」などと言うのだろう。

 考えて見て欲しい。海上で罪を犯して逃げる犯人が、陸に上がった途端、それを追う海
上保安官は犯人を逮捕することができない……なんて、そんな馬鹿な事があるのか? と
逆に問いたい。

 海上保安庁法に掲げる「海上における犯人の捜査及び逮捕」の解釈については、単に海
上に止まらず、海上で発生した犯罪を追って、それが陸上に及んだ場合でも、継続して追
跡し、捜査・逮捕できるものとして、海上保安庁創設以来、実行して来ているところであ
る。そうでなければ、海上において人命・財産を守り、治安の維持を図るなんてできる訳
もない。

 だが、テレビでは、過去の例を挙げて、魚釣島の不法上陸者を逮捕するために、警察官
が来るまで12時間もかかり、その間、海上保安官は何もできずにいた……と、あたかも海
上保安官には逮捕権がないのを全員承知しているかのような発言をしている。

 冗談じゃない! それは、政府筋だか何だか知らないが、上の方から「手を出すな!」
と指示があったからであって、通常なら躊躇(ためら)うことなく逮捕していたはずであ
る。

 現場にいた海上保安官の無念さを思うと、心から同情を禁じ得ない。海上保安官をコケ
にするのもいい加減にしてくれ! と言いたい。

◆簡単に不法上陸を許した“政治主導”

 それから、政府の描いたシナリオなるものは、簡単に不法上陸を許している。不法に国
土を侵そうとする者には一歩も陸地を踏ませない、とするのが、海上保安庁領海警備の基
本であり、国民感情もまったく同じだと思う。

 それに野田総理はこの問題に「毅然たる態度で臨む!」と言ったが、その実は強制退去
処分で事を済ませた。言っていることとやることがまるで違う。今の政府は、どこかが狂
っている! としか言いようがない。

 これで政府を追及すると、多分「警察に任せた」と言うだろう。もし、それが真実だと
すれば、海上保安庁を疎外する警察の縄張り意識の現われ!……としか言いようがない。
警察と海上保安庁は互いに足らざるを補うべきではないのか? それを正すこともできな
い民主党の“政治主導”っていったい何だ、と言いたい。

◆海上保安庁法改正案に異論あり

 また、このところに来て、海上保安官に離島での逮捕権などを付与する海上保安庁法の
改正案が、衆・参両院を通過したという。

 これにも問題がある。なぜ離島だけなのか? それも、限られた離島だという。海上保
安庁法に掲げる「海上における……」の解釈に疑義があるのなら、それをハッキリさせる
のに併せて、警察権の及ばない離島については、海上保安官にも逮捕権を付与する、とす
べきであろう。

 再び問う。日本海に浮かぶ竹島は、韓国が実効支配する日本の領土である。しかし、日
本船で竹島に行って上陸しようとしたら、どうなるか?

 威嚇射撃を受け、それでも強行すれば、確実に射殺される。北方領土だってそうだ。こ
ちらは漁に気を取られて、12海里以内に入り込んだ漁船が、銃撃されて漁師が何人も殺さ
れた事実がある。これをいったいどう見ているのか? 領土を守るというのは、これくら
い厳しいことなのである。

 我が国だけが、へらへらして中途半端な外交をしていたのでは、事態はますますエスカ
レートするばかりである。こんなことを繰り返していると、やがては尖閣どころか沖縄ま
でおかしくなり、果ては我が国自体が亡国の道を辿ることになる。

                              (平成24年8月30日記)

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三宅教雄(みやけ・のりお) 昭和7(1932)年、台湾・台南生まれ。同21年、引揚げ。中
学・高校を熊本にて過ごす。同31年、海上保安大学校卒業後、海上保安庁に勤務。第11管
区海上保安本部那覇航空基地長、第2管区海上保安本部本部長などを歴任し、昭和63(19
88)年、海上保安大学校長に就任。平成2年退官。日本李登輝友の会常務理事、台南会会長。

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