時局心話會 代表 山本 善心

 このところ東シナ海における中国海軍の暴走が周辺諸国を脅かしている。
中国は海軍力を異様に増強し、周辺諸国の海域に不法侵入するなど海洋
支配の動きを強めている。東アジア周辺諸国は、中国海軍の急速な近代化
がほどなく米軍の優位を脅かしかねないと懸念していた。16日、米国国務省
は中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国が軍事力の拡大を外交利
用することに懸念を表明する。

この数カ月、わが国周辺海域では中国海軍による領海侵犯が頻繁に起こ
っていた。今年4月、沖縄・宮古島間を中国海軍艦隊は近代化装備をアピ
ールするかのように航行。しかし、それ以上に中国のキロ級潜水艦浮上に
注目が集まる。国際法は、公海上で潜行が許されるのは潜水艦のみだ。い
まや中国潜水艦の技術力向上は目覚ましく、日本近海の隠密行動や米空
母を撃沈する可能性にも言及している。

今後、中国ミサイル潜水艦は日本近海に40隻以上を配備完了するとみら
れている。これまで米軍は空母戦闘群を急派することで急場をしのいで来
たが、中国海軍が保有するキロ級や元級の潜水艦が優位に立てば、米空
母は近付けない。日本を取り巻く海の攻防は「安全な海」から「緊張の海」に
変わりつつある。


東シナ海は平和と友好の海か


中国の海洋進出は共産党、解放軍、胡錦濤政府ならびに人民が後押しす
る国家戦略であった。4月に中国海軍艦載ヘリが日本の護衛艦に向かって
2回も異常接近して挑発行為を行っている。これは中国海軍の実践的な対日
訓練とも言えよう。さらに、5月には中国政府船が海上保安庁測量船の調査
活動を追尾し、威嚇妨害した。そのほかにも中国艦船や潜水艦が日本近海
を横行し、何度も計画的にわが国艦船に挑発を繰り返している。すでに日中
戦争の前哨戦は始まったと見てよい。

 しかし、これら中国側による非友好的な暴挙に対して外務省は形式的な遺
憾の意を表明するにとどまり、外交の機能不全を露呈する始末だ。中国側
は「東シナ海を真の平和、協力、友好の海」にしようと鳩山由紀夫元首相の
言葉を引用し、「日本側こそ中国軍の遠洋進出に慣れるべきだ」と傲慢なコ
メントを公言した。

わが国外交は、中国がいかなる危険な行動をとってもこれまですべて先送
り、事なかれ主義で通してきた。このままこうした姿勢が続けば、日本側はさ
らにじりじりと後退を余儀なくされ、中国の勝手な主張と行動がまかり通るこ
とになろう。中国の暴走は「自由と民主主義、法治と人権」の民主国家にとっ
て許し難き存在である。


南沙で中国の実効支配が進行中 


中国やフィリピン、ベトナムが領有を主張する南シナ海のスプラトリー(南
沙)諸島で、中国漁船の実効支配が進んでいる。4月末、中国は南シナ海
で操業する中国漁船を保護する名目で漁業監視船「漁政311号」を現地に
派遣。南シナ海ではマレーシア海軍の戦闘機と艦艇が出動し、約18時間に
わたる攻防の末、中国監視船が追い出された。中国は東シナ海のみなら
ず、南シナ海でも領有権を主張し、トラブルを頻発させている。

5月12日以降、中国漁船3隻が外国の海軍艦艇に拿捕され漁民ら28人が
連行された。22年前、ベトナムはスプラトリー(南沙)を巡る攻防で中国海軍
に一蹴されている。ここに来て、中国の軍拡に不信感を抱く周辺諸国も軍備
増強に力を入れ始めている。各国の軍事力が均衡すれば、結果として東ア
ジアは平和な海になる。


中国の脅威に東アジアが軍備増強で結束


 これらの増大する中国海軍の脅威に対し、ベトナムはロシアから6隻のキロ
級潜水艦を購入し、わが国の海上自衛隊に教育訓練、攻撃技術、艦船修
理などで指導を求める方針だ。その他インドネシアをはじめとする東アジア
諸国の軍備増強が急がれている。

 半面、中国はインド洋に面したパキスタン、スリランカ、ミャンマーなどの港
湾建設に資金と技術を提供した。そこでは、自国潜水艦や艦艇33隻が接
岸できる世界最大の海軍基地の建設が計画中だ。これら中国の軍事拠点
づくりに備え、今、米豪は中国の脅威と軍拡にどう対処するかが問われて
いよう。


日本の外交無策に危機感を強める東アジア


これまでいかにわが国近海で中国艦艇が横行しようとも東アジア諸国は
米軍が安全を保ってくれるという神話を信じてきた。しかし、米軍が動かず
中国の暴走が野放しにされたまま、さらに悲しいかな、東アジア諸国が期待
の星と仰ぐわが国政府が中国を宗主国と崇め、隷属外交を展開している体
たらくとあれば、中国に妥協せざるを得ないと考える国も出てこよう。

東ガス田の問題ですでにわが国はアジア諸国に対して外交失政を露呈し
た。米国が頼りにならず、わが国が中国への従属外交を続けている姿勢を
みて、東アジア諸国は自国防衛でやるしかないと危機感を強めている。

米国が中国の海洋覇権確立を放置すれば、台湾は侵略され、日本と韓
国は中国の属国になる。そうなれば、米国のこれまで築いてきた東アジア
の影響力は奪い取られ、米軍基地は撤去され、制海権も放棄することにな
ろう。しかし、ここに来て、米国の対中政策は周辺国を巻き込む「封じ込め
政策」で中国への圧力を強めている。


米、対中「封じ込め政策」で巻き返し


米国の対中政策はこれまでの静観姿勢から積極的な姿勢に転じつつあり、
対中抑止力と影響力の確保を狙っている。一方、中国は大陸間弾道ミサイ
ルや対艦ミサイルの開発を急ピッチで進め、米軍阻止を目論む。米海軍や
オハイオ級改良型潜水艦3隻を配備したのは、中国海軍への暴走に対す
る警告であり、抑止力であろう。世界で最も怖いのは年中どこかで戦争を行
っている軍事大国・米国が動き出した時である。

今回配備された潜水艦は米海軍の最大最強の戦略ミサイル原子力潜水
艦(SSBN)である。このミサイル潜水艦にはトマホーク発射筒22基、1隻あ
たり7発、1隻154発のトマホーク巡航ミサイルを搭載して射程1800キロ
の地上に向けた攻撃が可能だ。今後米軍はこれらを中国の近海海域に浮
上させよう。さらにインド洋から台湾海峡、日本近海の有事に域内各国との
協力関係を強化しながら中国包囲網作戦を敷き始めた。つまり、注目すべ
きことは米軍のアジア回帰である。

しかし、中国海軍は空母艦隊と米軍基地をミサイルの照準に入れること
で、米艦隊の西太平洋入りを阻止する構えだ。中国ミサイルは米空母が
近海に出動するのを防ぐのが目的である。中国はさらなる軍事拡大をエス
カレートさせ、事実上日米安保の無力化を狙ってこよう。


核保有・核使用の時代


米国は有事の際にはかつての広島・長崎での原爆投下のような思い切
った手段をとる国である。米国は、東アジアの権益を中国に奪われること
は考えていない。しかし、中国は日本、台湾、ベトナムからインド洋に至る
第一列島線、日本からグアム、サイパンに至る第二列島線まで米海軍が
近づけない囲い込み作戦を達成しつつある。

中国はすでにミサイル潜水艦40隻の配備を完了した。これは米空母が
近付けない戦略である。逆に中国は第二列島線の制海権確保に通常型
空母を2隻建造する予定だ。このまま放置すれば太平洋は中国の制海権
になるはずであった。しかしながら、米軍は太平洋海域に軍事力を増強し、
中国への抑止力となる構えだ。

しかし世界の警察官を自負する米軍はアフガニスタン戦争で苦戦してい
る。イラクから兵員を移動させても終結には程遠い。アフガニスタン戦争が
複雑な様相を呈しているのは、アルカイダをはじめ世界中のテロリストが核
兵器を手に入れようとしていることだ。さらに中国は、今後140カ所に原子
力発電所をつくる予定であると聞いている。


最終戦争は核戦争の可能性も


オバマ大統領は「核兵器を世界から無くそう」と国連で訴えたが、アフガニ
スタンにてこずり、アジアでは中国に挑戦を突きつけられている。米国は大
きな犠牲と財政赤字に苦しみながら国家存亡の危機を迎えていよう。米軍
がアフガンで敗北することは許されないが、最悪の事態になれば窮余の一
策としてアフガンで核兵器を使う可能性がある。

先の大戦で米国が広島・長崎に落とした原爆で事実上戦争は終結した。
あの投下がなければさらに20万人以上の被害者が出たと米国側は主張す
るが、それは米国側の言い訳に過ぎない。しかし、当時イギリスもソ連も米国
が原爆を日本に投下するなどあり得ないと考えていた。人間や国家には過
去の成功例を繰り返す習性がある。中国の無制限な軍事力増大によって米
国の権益が犯されれば、この東アジアに再び核が使用されるという問題の
浮上を否定できようか。

                                                                     
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9月「政民合同會議」のご案内
 9月8日(水)午前11時50分

      「米中新冷戦と日本」
       講師/中嶋 嶺雄 氏 国際教養大学理事長・学長 

民主党政権下で、日米同盟が大きく揺れている。当面は沖縄の米軍基地
問題が残るが、長期的には、中国の経済的・軍事的台頭、さらには世界的な
覇権獲得に対し、日米安保体制の強化が問われよう。今後日米関係はこれ
らの事態にどこまで対応できるか。わが国の行方を探る。内容と奥行きの深
いところで、さらに一歩踏み込んだ日本を取り巻く国際情勢の分析にご期待
ください。

日 時/9月8日(水)
       AM 11:50~PM 1:30
会 場/衆議院第2議員会館 「第1会議室」(地下1階)
 東京都千代田区永田町2-1-1
参加費/4,000円(お弁当代含む)
連絡先/ 担当:本間豊子
  ℡03-5832-7231
 詳細はホームページhttp://www.jikyokushinwakai.jp/でご覧下さい
事前申込のない方はご参加できません。ご注意下さい
すでにご案内をお送りしている方には、重複してのご案内となりますことをおわ
び致します


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