西日本新聞 特派員オンラインより

http://nishinippon.co.jp/nnp/world/reporterseye/taipei/20100107/20100107_0001.shtml


 有刺鉄線の張られたバリケード、至る所で見張る警官隊。コンビニの壁面ガラスはベニヤ板で覆われ、高速バスターミナルも営業休止となった。昨年末に中台窓口機関のトップ会談が開かれた台湾中部・台中市のホテル一帯は、異様な緊迫感が漂っていた。中国の窓口トップが来るだけで、これだけの厳戒態勢が敷かれるのは、台湾社会に根強い反中感情があるからにほかならない。

 台湾に着任して2年余りになるが、馬英九政権発足後1年半の中台の接近ぶりには目を見張る。台北の名所・故宮博物院や世界第2位の超高層ビル「台北101」は中国人ツアー客であふれている。彼らは大所帯で声も大きいから、ひときわ目立つ。昨年、台湾を訪れた中国人は前年の約3倍に増えたが、日本や米国、韓国からの訪台者はすべて減少した。「中国人の集団に恐れをなして得意客が逃げ出した」と野党系メディアは皮肉っている。

 台湾製品の輸出先の4割を中国(香港含む)が占め、観光業界も中国人客に頼らざるを得ない。台湾経済が中国抜きで成り立たないのも現実。だが、中国人と接するほど違和感を抱くという台湾人は少なくない。

 ハイテク企業に勤め、年に10回は中国の工場に出張するという40代の台湾人男性は「初めは中国人とも酒を飲んで話をすれば、分かり合えると思っていた。でも、彼らは自分たちが正しいと主張するだけで、台湾人の意見に耳を貸そうともしない。もう仕事上で必要なことしか話さないことにしている」と打ち明ける。

 昨年末のビジネス誌「天下」の世論調査によると、台湾住民のうち「自分は台湾人」と思う人は62%を占めたのに対し、「中国人」と思う人は8%、「どちらでもある」としたのは22%だった。台湾の将来については当面「現状維持」を望む人が78%と大多数だが、長期的展望を含めると「台湾独立」支持が44%、「中国との統一」支持はわずか12%だった。

 中国との統一を望まず、自分は中国人ではないとする人が多数を占める台湾。中国とは別の歴史をたどって築き上げた自由で豊かな今の社会を、住民は大切に守っていきたいようだ。

 だが、台湾を自国の一部と主張する中国は、台湾海峡沿いに約1300基(台湾国防報告書)のミサイルを配備し、武力行使の選択肢を放棄していない。「威嚇」の下で、中台の市場一体化は着々と進む。

 巨大な市場と軍事力を抱え、存在感を増す中国。天安門事件が起きた際には経済制裁を発動した日米欧諸国も、最近は対中批判のトーンを弱めている。「台湾人の意見」はますます世界に伝わりにくくなっているようだ。

=2010/01/07付 西日本新聞朝刊=

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