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台湾、そして台湾人を理解するため、もし日本で公開されたらぜひ見てほしいの
が、台湾で大ヒットを記録した映画「海角七号」だ。中国で「媚日映画」「皇民
化の影」と言った理由で上映禁止になったことが日本でも話題となったが、実際
にはそのような内容ではない。もしかしたらあの国が恐れているのは、台湾を愛
する台湾人に支持されるこの作品の「何か」ではないか。

私もこのほど、台湾人の友人から作品のDVDをもらって鑑賞したが、感動のあ
まり二回も見た。

物語の舞台は台湾南部の恒春の街。日本人歌手中孝介(本人が出演)のコンサー
トの前座を務めるため、住民を寄せ集めたバンドが誕生。主人公のボーカルはバ
ンドまとめ役の日本人女性と対立するが、主人公の手元には、六十年前に日本人
教師が引揚船の中で書いた台湾人の恋人へのラブレターが配達されようもなく置
かれていて…。

敗戦と言う歴史に翻弄されて分かれざるを得なかった男女の情感が現代を生きる
若者たちの心を揺り動かして行くと言うストーリーだが、実際には切ない恋愛劇
と言うより明るい喜劇であり、スピード感ある音楽映画でもある。全編を通じ、
台湾人の明るさ、善良さ、優しさなどに支えられた活力が充満している。

私には登場人物一人ひとりが、愛すべき典型的な台湾人に見えた。最初はみな勝
手なことをやってバラバラでも、最後は情の部分で結ばれて、大きなエネルギー
を発揮するあたりが何とも台湾人らしく、こちらまで気持ちが明るくなる。

この低予算の作品の興行収入が五・三億元に達し、かの「タイタニック」に次ぐ
台湾史上第二位を記録したのは奇跡的だと報じられているが、その理由はやはり
、この感動作そのものが「台湾」だからだろう。馬英九政権が誕生して中国傾斜
を強める中、この「台湾」を見て憂さを晴らそうとの心理が民衆に働いたことも
あるようだ。

そしてそればかりではない。総統選挙で「台湾」は敗れたが、その代わり興行成
績を高めて「台湾」を勝利させようと、何度も映画館に足を運んだり、友人、知
人に「見に行け」と呼びかけたり…。ジャーナリストの林意玲氏はブログで、「
今年『海角七号』は台湾社会において一つの美しい共通の記憶となった。史上空
前の五億元の収益は、鑑賞することが全国民運動になったことを示している」と
書いていた。

台湾人の友人からも、「自分ではあまり感動していないのに、何度も見に行った
人がいる」とか、「知人から『あなたにはDVDは貸さない。まず映画館に行っ
てくれ』と言われた」と言った話を聞かされた。

十一月上旬に台湾を初訪問した中国の代表、つまり陳雲林・海峡両岸関係協会会
長は台北市内でこの映画を見ることになった。そしてその感想を述べるに際し、
「台湾の海は美しい、恒春は美しい」とするにとどめた。台湾への籠絡工作を任
務とする彼の、精一杯のリップサービスだったのだろうが、これであの作品の情
感の豊かさを理解したかどうかが疑問視された。そして帰国後の同月下旬には、
この中国要人はこう言ったのである。

「皇民化の影がある。おそらく大陸の民族情緒を刺激するだろう両岸民衆の考え
方が対立するのは、目下の関係改善の情勢には不利だ」と。本当に作品を見たの
かと言いたくなるような、まったく筋の通らない話だ。

そこで私は、陳雲林が本当に言いたかったのは「あの映画は台独だ」ではなかっ
たかと思うのである。しかしそう言っては、せっかくの関係改善に影響を及ぼす
。それで中国当局はその後、「上映禁止とは言っていない」「すでに海賊版DV
Dが出回っているから上映は無理だ」などと釈明。最近になってようやく上映許
可を出したのだとか…。

ちなみに中国人から見ると台湾の文化的独自性(中国との異質性)を強調するこ
とが「台独」だが、もともと独自性があるのだから仕方がない。それでもその独
自性は日本の影響によるものだと政治的に捉え、台湾人の媚日思想こそが台独思
想だと警戒するのだ。

逆に台湾人を中国人と思い込んでいる日本人がこの作品を見れば、たとえば日本
人に対する優しい眼差しだけでも、「どうも中国人とは違う」と直感することだ
ろう。

登場人物の滑稽かつエネルギッシュな掛け合いに笑い転げながらも、六十年前の
ラブレターの場面(日本語で朗読される)では涙を流すのが台湾人だ。「日本の
殖民地支配を否定していない」といきり立つ中華ナショナリズムが見られないの
は、台湾人が中国人ではない証である。

これほど善良な民族が中国の支配下に置かれるなど断じて許してはならないこと
だ。

アカデミー賞外国語映画部門でのノミネートが期待されたが失敗したようで、台
湾のために残念だ。しかし傑作は傑作である。台湾人と日本人の心の近さも理解
されよう。そこで日本で上映の際には「ぜひ見に行こう」と重ねて呼びかけたい

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